【書評】 『読書は格闘技』

僕は読書に関して少し悩んでいました。

 

本屋をふらっと歩いていて「あ、これ面白そう!」と思い、

手に取ってみては読んでみるものの、

それはどこか出版社のマーケティング手法に影響されている

(もっと言えばコントロールされている)ような感覚が

ぬぐえなかったからです。

 

そんなことを考えていると、二つ疑問点が湧きました。

  1. 「凄い!」と思う人は一体どんな思考プロセスをしているのか。
  2. 「凄い!」と思う人は一体どんな本を読んでいるのか。 

についてです。

 

そのような疑問に答えてくれる本が、

運よく最近出版されていたので、早速購入してみました。

 

読書は格闘技

読書は格闘技

 

 

 

内容

コンセプト

読書は'格闘技'とはどういう意味なのだろうか?筆者によると

書籍を読むとは、単に受動的に読むのではなく、著者の語っていることに対して、「本当にそうなのか」と疑い、反証するなかで、自分の考えを作っていくという知的プロセスでもあるのだ。 (p.6)

 つまり、読者自身が書物を通して、筆者の主張に対して議論を戦わせ、

より濃密な読書体験にしていく能動的なプロセスでもある、といえる。

 

言ってみれば、筆者の考えというテーゼに、読者の批判というアンチテーゼを加え、

より良い考え方にアウフヘーベンさせるという、弁証法的な手法である。

 

 しかし、これを書籍で行うとなると大きな問題点が残る

それは、検討する書籍に対して、筆者が議論した経緯を淡々と記録するという

議事録的な文章になってしまうということだ。

 

そのため、この本では筆者が設定した12のテーマに対して、

毛色の異なる二つの書籍を挙げ(ボクサー)、

その二つの比較を著者が行うことで(レフェリー)、

読者にそれぞれの書籍の概要と、試合の様子を伝えている(観客)。

 

テーマ

『読書は格闘技』では次の12テーマについて議論を交わしている。

  • Round1:心をつかむ
  • Round2:組織論
  • Round3:グローバリゼーション
  • Round4:時間管理術
  • Round5:どこに住むか
  • Round6:才能
  • Round7:大勢の考えを変える(マーケティング)
  • Round8:未来
  • Round9:正義
  • Round10:教養小説-大人になるということ
  • Round11:国語教育の文学
  • Round12:児童文学

 

これらのテーマをもとに、二つの書籍を比較、議論しています。

 

また、各章の終わりにそれぞれ6冊紹介されており、ブックガイド的な役割も果たしています。

感想

12テーマの中で挙げられている中には読んでいない本も多く、

本を読み進めていくうちに、自然とそれらの本を「読書」したようになり、

様々な見識に「なるほど」と大変勉強になりました。

 

読書の習慣がついたのが大学進学後なので、覚悟はしていたのですが、

挙げられていた中でちゃんと読んだことがあったものは

『影響力の武器』『人を動かす』『1984年』『山月記・李陵』

ぐらいで、まだまだだなぁと痛感させられました。

 

読み終わると、Round4の時間管理で挙げられていた本がとても気になっていました。

12テーマの選び方もそれぞれ違った形の興味のそそられるテーマであったり、

本を読む動機を起こさせる仕掛けが盛り込まれているのもよかったです。

 

また、僕自身もともと読書が嫌いだった理由が、

高校時代の国語のテストで読者の主張を、そのまま受け入れないと

マルをもらえないことへの不満からきていました。

(もちろん著者の意見を一度受け取るという行為も大事だと今は思います)

 

なので、比較検討しながら議論を重ねていくというこの本のスタイルは、

そういった読書アレルギーの人が、本を読むきっかけにもなるかもしれません。

 

まとめ

 この本は

 

  •  漠然と「本を読みたい」と思っている人
  • 能動的な読書法を身に着けたい人
  • どんな本を読もうかと迷っている人
  • 読書にアレルギーがある人

 に特に、オススメです。

 

 そして、この本を読み終えたら、今度は読者自身が'格闘'するまでが

この本の醍醐味なのかもしれません。